1.痛み外来って?
2.普通と異なった鎮痛剤の処方とは?
3.胃への負担は?
4.まとめ
1.痛み外来って?
私は通常,手術室での全身麻酔に携わる麻酔科医をしております.ですがささやかに,外来診療も行っています.
通常,麻酔科医が行う外来の目的は2つ.
1.術前外来(術前診察):術前診察は、麻酔科医が手術前の患者さんのコンディションを整え、麻酔法や鎮痛法を選択するときに必要な情報を得るために行います。
2.ペインクリニック外来:症状や身体所見から多角的に痛みの原因を診断し、薬物療法だけでなく神経ブロック*を始めとする各種の治療法を駆使して痛みを軽減・消失させQOLを向上させます。
さてここで,そのささやかな外来に来られる方々は,年齢を重ねた方が多い印象.試しに診察人数と平気年齢を,直近3か月で調べてみました.
・・・・・・・ 診察延べ人数 平均年齢 最高齢 最少齢 平均診察時間
2023年 11月 107名 68.3際 92歳 17歳 16.4分
2023年 12月 123名 69.4歳 97歳 17歳 14.1分
2024年 01月 109名 66.4際 97歳 17歳 15.3分
年末にとても若い方が受診されましたが,患者さんの殆どはやはり70歳を超えられた方々,自然に「ペインクリニックってな〜に?聴いたこと無いですよ」,でしょう.
なので横文字は避けたいな〜と.そこで私は「痛み外来」と名付けました.高齢の方々には,ペインクリニック外来というカタカナよりも,日本語のほうがしっくりくるかな,と考えた次第です.
また痛みに悩む方々にあまねく知って頂きたい.受診の敷居を低くしたい,そもそもペインクリニックの知名度だって低いのだし・・・ね.(自虐,笑)
そうしてこの痛み外来,2005年4月にスタートしました,当時のかしま病院理事長,中山 元二先生に開設をお願いしたところ,なんと二つ返事.むしろ,中山前理事長がかしま病院を開設された際の苦労話を頂けたほど,この痛み外来に賛同いただけました.とても懐かしい記憶です.
たまたま2024年2月17日.何気なく受診された方の人数を調べてみました.この時点で痛み外来の診察を受けられた患者さんは,のべ15,454人.なんと15,000人を超えておりました.ここには統計を取り始める,2009年以前の患者さん方は含まれておりませんので,もう少し延べ人数は増えるでしょう.
シンプルに,私はその人数にとてもビックリしました.またこんな私について来てくれた方々,信頼してきてくれた患者さん方,そしてご家族の皆さんに,なにより感謝いたします..
さて,診察ではいつ,どこが,どの様に痛むのか.しっかりとお話を伺い,その上で,いかにその方の痛みを減じようか思案し,現在の工夫があります.
2.普通と異なった鎮痛剤の処方とは?
ここで本題の「普通と異なった鎮痛剤の処方」とは,どのような処方でしょうか.
その答えはズバリ, 起床時,昼・夕食前 の 1日3回 の処方です.
眠る時の処方も好きなのですが,そのお話はまた別の機会に.
通常は,毎食後,1日3回,ですよね.
なれど,慢性腰痛の方や,帯状疱疹痛・帯状疱疹後神経痛,あるいは原因不明の痛みなどで悩まれている方々は,眠っている時だけは,痛みから解放されます.言い換えれば,目が醒めた時から痛いのです.目が醒めて,また眠りにつけるまで,痛むのです.
そして,夜.高齢の方の早い就床,やはり多いなと感じています.日中に入浴し,18時ころに夕食を摂り,19時にはもう就床,なんて方もいらっしゃるのです.すると夕食後のお薬,その効果が出る頃には睡眠中.ちょっともったいないですよね.ならば夕食前のほうが少しは理に適っていると思いませんか?
なので,起床時,昼・夕食前 の 1日3回 と,いささか普通とは異なった処方となりました.
もちろん,飲み間違えの無いよう,説明にも気をつけています.その説明,特にご婦人には以下の様に説明しています.
以上,このようにお話しています.
クスリって,年齢とともに増えてしまいがち.けれど最近は服用のタイミングに合わせ,一袋だけ開ければ飲めるシステムがあります.いわゆる一包化です.なので私が選んだ痛み止め,間違って飲む可能性は,案外少ないようです.一包化のシステムに,とても助けられています.
写真:エピグノ ジャーナルより
3.胃への負担は?
ここで従来使用されいる鎮痛剤.いわゆるNSAIDsにはいろんな名前があります.
- ロキソプロフェン(ロキソニン®) イブプロフェン(ブルフェン®)
- ロルノキシカム(ロルカム®) アンピロキシカム(フルカム®)
- ジクロフェナク(ボルタレン®) インドメタシン(インダシン®)
- メフェナム酸(ポンタール®)
- アスピリン(バファリン®)
などなど.(参考:千葉県医師会)
どれもが喘息,胃潰瘍・十二指腸潰瘍の原因,あるいはそれらの悪化が心配です.特に空腹時の内服は極力避けねばなりません.なので毎食後の内服が定番.毎食後なら,クスリは胃の中で薄められ,胃への刺激が和らぎます.また食後なら忘れることもほとんどありませんしね.さらに胃粘膜保護剤(例:レバミピド),もしくは制酸剤(例:ボノプラザン)などと一緒に服用するのも定番です
メロキシカム(モービック®) エトドラク(ハイペン®) セレコキシブ(セレコックス®)等です.
しかしながら,痛み外来に来られる方々は,それら従来の痛み止めが効かない方ばかり.ですよね,普通の痛み止めが効いていれば,わざわざ痛み外来に来る必要がないのですから.
そんな方々に必要な痛み止めは大抵,胃の心配は無用なお薬です.だからこそ,起床時にも,食前にも内服出来るのです.
イラスト:いらすとや より
それでもなお,心配される方はいらっしゃいます.当然です.自身のお身体のことだもの.
そのような時は,次のような説明を加えます.
時間に余裕がある時はさらに,
どうでしょうか.このような説明で,安心して頂けるでしょうか.
4.まとめ
さて,ここで今回の纏めです.
1.私の痛み外来(ペインクリニック外来)では普通と異なった鎮痛剤の処方をします.
2.それは 起床前 昼・夕食前 の 1日3回 の処方です.
3.ここで使用する鎮痛剤は,胃の心配は無用なお薬です.
4.それでも心配な方はいらっしゃいます.出来るだけ安心して頂けるよう,説明にも工夫を凝らしています.
以上,この度も最後までお読み頂き心より感謝いたします.ぜひご意見や感想を文字化しお送り下さい.私にとってはこの上ない喜びとなり,またブログを書く上での熱源となります.期待しお待ちしております.
いつ,どのように痛むのですか? 1日ずっと痛むのですね.
では先ず,起床時に飲んで下さい.次は昼食前,その次は夕食前の服用です.
1日ずっと痛むのですよね.朝起きて直ぐに痛むのですよね.
なので起きたら先ず,お薬を飲んで下さい.大丈夫です.このお薬は胃に悪さはしません.しかもお口の中で溶けるお薬(OD錠,口腔内崩壊錠)なので,お水無しでも構いません.
起きて直ぐに痛むのですよね.その痛みを堪えつつ,着替えたり,顔を洗ったり,痛くも無いお父さんの為に朝食を作ったり(ここで結構笑って貰えます).そして朝ごはんを食べ,痛み止め飲んで,やっと痛み止めが効いてくる.
楽になるまで起きてから何時間でしょう.1時間?それとも2時間?
朝起きて直ぐに飲めば,朝ごはんを作っている時にはもう効いてきます.
そして同じように,お昼の少し前に飲めば痛く無く,食事を摂れます.夕食も同じです.せめて食事くらい,痛く無く食べたいですよね.
今の状態で痛み止めを普通に飲めば,食事はつまらないものになります.痛いのですよね.痛いから早く食事して薬を飲みたい,食事はお薬の飲むためのもの,となってしまいます.食事がとてもつまらないもの,になってしまいます.だから食事の前にお薬を飲んで下さい.食事くらい,痛く無く,ゆっくり食べたいですものね.