私が全身麻酔を行う際,医療用麻薬を使わない理由と,アセリオ®よりロピオン®を好む理由

医療
目 次
1.はじめに
2.どうして創が痛むのか
3.先ず《医療用麻薬》
4.次に《アセリオ®(アセトアミノフェン)》
5.3番目は《硬膜外鎮痛》
6.ここでようやく私の好きな《ロピオン®(フルルビプロフェン)》
7.まとめ

 

1.はじめに

医療用麻薬とアセリオ®(アセトアミノフェン)はその活躍の場が脊髄と脳なので,中枢性鎮痛剤と呼べるでしょう.

また硬膜外鎮痛法は,主に脊髄から出たばかりの神経根周辺に麻酔薬を効かせるので,やはり中枢性鎮痛とも呼べます.

一方,NSAIDsと呼ばれる類は解熱鎮痛消炎剤と呼ばれ,創自体に効くので,末梢性鎮痛剤と言ってよいでしょう.

私個人的には,多くの症例でNSAIDsであるロピオン®(フルルビプロフェン)を選び,しかも持続静注の形で使用しています.結果として,医療用麻薬とアセリオ®を使用することは無くなりました.

それで何か患者さん,あるいは病院にデメリットはあるのか.むしろメリットばかりと感じ,長年使用しています,しかしなぜか愛用するのは私たった1人だけ.以前は研究会や学会でも発表したことはあるのですが,残念ながら論文にまではしませんでした.というより出来ませんでした.

それでも私は使用し続けています,これからその理由を説明します.
長文はご容赦.大好きなお飲み物,おやつなどをご用意なされば,リラックスしてお読み頂けるかと思います.

また,ご意見・ご質問は大歓迎です.様々なご指摘は私の文章を鍛えて頂けます.どうぞ忌憚の無いご指摘,よろしくお願いいたします.それでは!

 非ステロイド性抗炎症薬( Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugs, NSAIDs )と対極は,ステロイド性抗炎症薬のプレドニン®(プレドニゾロン)です.
2.どうして創が痛むのか

ここで,創がどのようにして痛むのか,出来るだけ簡単に説明してみます.

怪我や手術で細胞が壊れると,その細胞の膜(リン脂質)からアラキドン酸という物質が合成されます.そのアラキドン酸は普通に代謝され変化するのですが,代謝には3つの種類があります.その中の1つがシクロオキシゲナーゼ(COX)の経路.シクロオキシゲナーゼ(COX)という酵素によって,アラキドン酸はプロスタグランジンやトロンボキサンという物質に変化します.その中でもプロスタグランジンのE2(PGE2)は炎症を起こし,疼痛を増強する物質。この物質により,神経系は脳へ「痛み」を伝えます.また血管を広げる作用も強く,発赤や熱感の理由となります.

プロスタグランジンという名前,プロは「前」という意味,スタは「立つ」という意味.グランドは「腺」という意味を持ちます.
つなげると「前立腺」.つまりもともと前立腺から発見された物質.なのでこのような名前となりました.
シクロオキシゲナーゼ(COX)が,アラキドン酸からプロスタグランジンやトロンボキサンを激増させる事を滝(カスケード)に例え,海外の方はアラキドン酸カスケードと名付けています.

ここからは,鎮痛剤・鎮痛法に関する解説をします.

3.先ず《医療用麻薬

手術室で主流の医療用麻薬はフェンタニル®(一般名:フェンタニル 以下同),アルチバ®(レミフェンタニル),病棟での主流はナルサス®(ヒドロモルフォン),フェンタニル®でしょうか.

医療用麻薬は主に中枢(脳や脊髄)のμ受容体(ミューレセプター)と結合し作用することで,非常に高い鎮痛効果を現します.身体への侵襲がべらぼうに強い手術に対し,全身麻酔で使うにはもってこいの鎮痛薬.手術による非常に強い痛み刺激は,手術部位から脊髄を経て,脳へと伝わります.それが,μ受容体でブロックされるイメージです.

 ギリシャ文字の「μ」は英字「M」の語源.そしてこの場合の「M」はモルヒネ「Morphine」の頭文字として選ばれています.

では私が医療用麻薬をなぜ使わないのか,それは辛い副作用である嘔気,嘔吐の予防が最大の理由です.通常でも吐き気は嫌です.吐くのも嫌です.何処かに傷があると,吐く時のりきみで泣くほど痛い.創がお腹だったら最悪です.

そして麻薬での便秘は有名です.この便秘は腸管のμ受容体にも麻薬が作用してしまい,腸管の動きが悪くなるのです.いわゆる薬剤性便秘.手術を受けたり,臥床するだけでも動きの悪くなる腸管.術後に避けたいのが腹部膨満感です.お腹が張って苦しくなるのですね.痛みや吐き気は薬で対処できます.けれど腹部膨満感はガスが出るまで耐えねばなりません.オナラを促すため,痛みを我慢し歩け歩けと勧められる由縁です.

さらに何かトラブルが起きた際,麻薬の廃棄は非常に面倒です.ま,我々医師は何もしなくて良いので楽ですが,病棟と薬剤部はえらく大変と思われます.

これらの理由により,私は麻薬の使用を2014年8月に停止し,今年で丸10年となります.

ここで1つの疑問.全身麻酔に医療用麻薬を使わなければ,手術は大丈夫なのか.手術後の痛みは大丈夫なのか.
答は簡単です.大丈夫だから医療用麻薬を止めることが出来たのです.その鍵は昔から有る鎮痛剤の組合せ.長い時間という試練に耐え,酸いも甘いも知り尽くされた強い鎮痛剤の,ソセゴン®(ペンタゾシン)とレペタン®(ブプレノルフィン)です.これらがあるので,なんの支障もありません.実はこの2剤もその副作用に嘔気・嘔吐を持っています.ですが同時に使用する麻酔薬にドロレプタン®(ドロペリドール)というお薬があります.この注射薬には麻酔という作用の他,制吐作用と呼ばれる,吐き気・嘔吐を防ぐ作用もあるのです.このお薬の力で,手術後の心配もありません.このお薬も昔から有る薬.どうぞご心配なく.

4.次に《アセリオ®(アセトアミノフェン)》 

カロナール®(アセトアミノフェン)の点滴版ですね.

アセトアミノフェンの作用機序は,中枢神経におけるシクロオキシゲナーゼ阻害(COX)と考えられていますが,詳細な機序は未だに解明されていません.(日本ペインクリニック学会.筆者改編)

繰り返しますが,アセトアミノフェンは中枢神経においてシクロオキシゲナーゼ(COX)の作用を妨げ,プロスタグランジンやトロンボキサンの生産を抑えます.結果,熱・痛み・炎症が減ります.解熱鎮痛消炎剤と呼ばれる由縁です.ただ注意点は,中枢においての作用であること.創自体での作用ではないため消炎作用はかなり小さいのです.なので実際には解熱鎮痛剤と呼ばれ,消炎の文字は消えることとなります.

また,仮にアセトアミノフェンをその極量の1日4,000mgを使用してしまった場合,全身状態によっては劇症肝炎の危険性を孕みます.なのでアセリオ®の場合,1日3パックが限度,と考えたほうが安全かもしれません.

一方,患者さんが喘息あるいは胃潰瘍・十二指腸潰瘍の持病をお持ちの際,NSAIDsの使用はそれらの悪化を心配し躊躇します.その際,アセトアミノフェンはかなり安心して使える薬剤でしょう.このメリットは大きいと思われます.また価格的にも財布にお優しいお薬です.

アセリオ® 1パック ¥310円 1日3パック使用して ¥930円
ロピオン® 1アンプル ¥197円 1晩7〜10アンプル使用で ¥1,379円〜¥1,970円
カロナール® 多めの500mgで 1錠8.8円 1日3回 内服して ¥26.4円
ロキソプロフェン® 60mg 1錠7.9円 1日3回 内服して ¥23.7円

ロキソプロフェン®が最も安価ですが,通常は胃炎・胃潰瘍治療剤のレバミピド®も併用します.
レバミピド錠®100mg 1錠10.1円 1日3回 内服して ¥30.3円 1日合計 ¥54.0円

非常に異なる費用です.アセトアミノフェンが安価,と考えられる実際です.

5.3番目は《硬膜外鎮痛》

硬膜外腔に専用の細いカテーテルを入れ,1回注入や持続注入の形で局所麻酔薬を作用させます.硬膜外腔という解剖のお話はここでは割愛しますが,脊髄から出たばかりの脊髄神経は,局所麻酔薬の影響で一時的に麻痺します.歯の治療で麻酔薬が効くと,唇の感覚がなくなるのと同じ状態です.なので末梢神経が受けた痛みの信号は,脊髄で堰き止められ,脳には伝わりません.仕組みじたいは医療用麻薬と同じ,と思って頂いても構いません.

これまでの2つの鎮痛剤,1つの鎮痛方法には,実は共通点があります.それは創のある現場にはなにも作用しないことです.中枢性鎮痛剤,あるいは中枢性鎮痛法と私が呼んだ理由です.

創でのシクロオキシゲナーゼ(COX)は,その創の大きさに比例してアラキドン酸を代謝・変化させ,粛々とプロスタグランジンやトロンボキサンを増やします.脳が気付いていないだけで,現場の創では痛い状況が続いているのです.

・・・なので・・・薬の効果が切れると・・・かなり・・・痛いです.

ただし,硬膜外鎮痛法は大好きです.何故なら,3日間,あるいはさらに数日間,夜も休まずに痛みを取ってくれるからです.カテーテルの挿入も,私の場合ミダゾラム®3mgほどで鎮静下に行います.背中の注射も痛みゼロで出来る・・・のではなく,注射の記憶もゼロに出来る,ので大好きな方法なのです.

6.ここでようやく私の好きな《ロピオン®(フルルビプロフェン)》

ロピオン®は多くのNSAIDsの1つ.一般名はフルルビプロフェン.

この一般名が示すように,ロキソプロフェン(先発品名 ロキソニン®)ととっても良く似たのお薬です.

そして私が知る限り,NSAIDsとしては唯一の注射薬です.

アセリオ®(アセトアミノフェン)は抗炎症作用が非常に弱く,NSAIDsには分類されないのだそうです.

NSAIDsは,これまでの中枢性鎮痛剤・鎮痛法とは事なり,創の現場で作用します,創の現場でシクロオキシゲナーゼ(COX)を阻害し,アラキドン酸カスケードを止めてくれます.なので強力な発痛物質であるプロスタグランジンのE2(PGE2)が増えないのです.当然創の痛みは減ります.患者さんは楽です.患者さんが楽だとナースコールは鳴りません.ナースコールが鳴らなければ看護師も楽です.看護師も楽だと,深夜に主治医への電話相談も減ります.すると主治医も深夜に起こされず楽になります.そもそもコロナ禍が無ければ手術後,ご家族は心配で患者さんの横に居ます.患者さんが痛まなければ,ご家族も安心です.痛くないと言うことは,かように皆が楽なのです.とてもとても重要なことと捉えています.

ここで少し古いお話をします.かつてはジクロフェナク座剤®が大好きでした.術後の創痛,腰痛,膀胱違和感にとってもよく効いてくれたからです.手術翌朝の患者さんの笑顔は嬉しいものです.なので朝の回診は楽しいものでした.

ある朝,患者さんは体格が華奢なお年寄り.当たり前の様に無痛を期待して「どうでしたか?」.ところが痛かったのだと.眠られなかったのだと.顔貌は硬い表情でした.直ぐに看護記録を確認すると,私がいつも指示していた21時のジクロフェナク座剤®,看護師の判断で中止されていたのです.深夜に痛みで目覚めないように,朝まで眠られるように指示した21時のジクロフェナク座剤®.中止の原因は低血圧.深夜の低血圧は避けねばなりません.なので夜勤看護師は適切な判断をしました.ただ,患者さんは痛みに耐えねばなりませんでした.

ジクロフェナク座剤®は直腸の血管より速やかに吸収され,肝臓で弱くなることなく全身を巡ります.手術創に到達したジクロフェナクはシクロオキシゲナーゼ(COX)を阻害し,プロスタグランジンのE2(PGE2)の産生を抑え,痛みを充分に軽減し,さらに腰痛・膀胱違和感も軽減ます.しかし速やかで強い作用の裏返し,副作用にも注意を払うべきお薬です.強力な血管拡張作用により血圧は低下し,腎血流は低下します.尿量すら減ってしまうのです.夜勤看護師にとって,ぜひとも避けたい副作用です.

そのような状況の中,ロピオン®注50mgが発売されました.本来は注射薬・点滴薬,もし持続静注できたらと考え,試行錯誤してみました.さすれば体重50kgの患者さんに,時間2ccの速度で始め,朝まで続けたところ,とても上手く往くようになりました,持続静注です.ロピオン®の血中濃度は,ゆっくり増えて行くため,血圧が急に下がることがありません.血圧低下で尿量が減ることもありません.

ロピオン®は1アンプル,5ccで50mgです.時間2ccであれば2時間30分で1アンプルの持続静注が終わります.となるとその長時間の間に,ロピオン®の一部は代謝されます.なので,血液の中での蓄積は非常に少ないと考えられます.予想通り,明け方近くでも血圧低下はみられておりません.点滴のトラブルさえ無ければ,非常に安全に投与できる薬剤なのだと判りました.

また整形外科では,比較的若い患者さんも多くおられます.痛かったら座薬がありますよ,と伝えます.ところが瞬殺されます.看護師さんの指が自分のお尻に入る,とんでもないです.絶対にダメです.と嫌われていました.なのでロピオン®に移行してからは,そんな恐ろしい方法を伝える必要も無くなりました.

こんな経験もあります.私の担当麻酔症例.術後鎮痛法はあらかじめ決まっていました.神経ブロックという手法です.たった1時間しか効かない局所麻酔薬(例:キシロカイン®)が,エコーで精度を増して行うと,何時間でも無痛でいられます.不思議な現象でした.なので現在でも学会での報告が旺盛なほど,普通の方法となっています.ところが翌朝回診で浴びせられた言葉は辛辣でした.「地獄をみました」.・・・疼痛もなく入眠できた患者さん.ところが深夜に突然その効果が切れ,途轍もないほどの痛みを感じ,眠られず,ただ耐えたのだそうです.私にとっては衝撃でした.その神経ブロック,私にはできない手技です.私の代わりにブロックをしてくれたのはそこの麻酔科部長.驚いた私はそそくさと報告しました.そうしたら・・・「それでいいんだ」「それでいいんだ」.私は今でも理解できていません.

さらにどんな患者さんでも,状態の急な悪化は常に心配されるところです.そのような時,持続静注なら直ぐに停止が可能です.痛み止めの飲み薬(例:カロナール®),坐剤(例:ジクロフェナク®),15分の点滴(例:アセリオ®)などは,1度投与したら,もう取り戻せません.内服のお薬を吐かせるわけにもゆきません.でも持続静注のお薬はすぐさま止めることが叶います.そもそも少量投与です.影響を無くすことが容易です.この安全性も確認出来ました,

持続静注のお薬は,①急激な変化も起きず,②効果が深夜に消えることも無く,③途中で止める選択枝を持つ.これらのような利点を持ちます.ところが注射も坐剤もアセリオ®も,数時間後には効果が切れるのです.夕方に使用すれば効果の切れる時間帯は深夜.私が患者になったら,選んでは欲しく無い方法です.希望は,朝までしっかり効く鎮痛法.しかもその方法が終わっても痛くない鎮痛法.私はそれをずっと求めて今があります.

まだ利点はあります.内視鏡手術で創部にまぶす局所麻酔薬.この方法も想定外に効く方法だとか.ただ数時間後には効果が切れる方法に変わりはありません.多くの外科医,麻酔科医は好んでいる方法です.でも,私は好みません.選びません.何故なら創にしか効かないのだから.辛いのは他にもあるから.寝返りを打てない事による腰痛,オシッコを出すためにの管による膀胱の違和感.それらには全く効かないのです.

けれどロピオン®の持続静注は違います.効くのは創だけではないのです.腰痛にも効きます.一般には左腕に点滴,右腕に血圧計,胸には心電計,背中には硬膜外カテーテル,お腹にはドレーン,膀胱にはバルーンカテーテル,両下腿には加圧式マッサージ器.寝返りは難しいです.腰に響きます.むりくり寝返り打とうとすれば,今度は創に響きます.そこに身の置き場はありません.

それに膀胱のバルーンカテーテル.特に前立腺をくりぬくホルミウムレーザー前立腺核出術(HoLEP)という手術.お腹に創はありません.創の痛みは無いのです.なれど膀胱に入るのは普通のバルーンカテーテルではありません.膀胱に入るのは太く硬い止血用バルーンカテーテル.麻酔から目覚めた患者さんが唱えるのは「しっこたっちいいけ」「しっこたっちいいけ」.いわき弁です.「おしっこしていいですか?」「おしっこしていいですか?」の意.苦しいのです.辛いのです.仮に止血バルーンカテーテルではなかったとしても,若い人には厳しいです.とてもヤバイです.もう一つ.腎臓と膀胱との間の尿管に入れるステントと呼ぶ細い管.ただの尿管結石なのに.やはり身体に創はないのに.動く度にそのステントでズキン.なれどロピオン®の持続静注を使えばかなり楽になります.そのためのロピオン®です.

では何故ロピオン®はそれほどまでに効くのでしょうか.それは創の現場に作用するからです.持続静注されたロピオン®は,絶えず創に供給されます.創に届いたロピオン®はシクロオキシゲナーゼ(COX)を邪魔します.アラキドン酸カスケードを邪魔します.プロスタグランジンE2(PGE2)の産生が邪魔されます.なので創痛が減るのです.ロピオン®は手術翌朝,その持続静注が終わります.けれどプロスタグランジンのE2(PGE2)やトロンボキサンは創にはほとんどありません.そのためロピオン®の効果が消えても,直ぐに痛くなることはありません.翌朝の回診が出来ず,回診が昼や夕にずれ込んだとしても,特に痛がっている患者さんは非常に少ない印象です.そもそもプロスタグランジンのE2(PGE2)などが少ないので,他の鎮痛剤の効果も高く期待出来ます.これは予想してはいなかった,嬉しい効果でした.

腰痛,膀胱違和感.寝返り出来ない,動けないことの辛さ,映画館でもそうです.2時間過ぎれば皆,腰を伸ばします.でもベッド上ではできません.太っている人ならなおさらです.自重で腰が沈みます.一晩の薬で肥満は消えません.かなり,辛いです.そして膀胱のバルーンカテーテル.柔らかいゴム製としても膀胱,尿道への刺激は無視できません.1度不快感を感じれば,尿意の辛さに耐えねばなりません.なのでロピオン®を使用し,腰も痛く無い,膀胱も苦しく無い,と言って貰えれば,私はとても嬉しく思います.

7.まとめ

医療用麻薬はその非常に強い鎮痛作用で,手術には欠かせないお薬です.アセトアミノフェンも副作用の少ない,安全性の非常に高い解熱鎮痛剤です.また安価です.その上で私がロピオンを第一選択する理由は,

  1. 注射剤であり,持続静注が可能である.
  2. 持続静注なので,血圧低下や尿量減少の心配が少ない.
  3. 緩徐な持続静注なので,血液中に蓄積する心配は低い.
  4. 若い人にとって直腸に薬や指が入る,そんな恐ろしい方法を避けられる
  5. 朝まで持続静注することで,深夜に効果が切れ痛む,という不安が無い.
  6. 状態の変化によっては,すぐに中止できる.
  7. 創だけでなく,腰痛・膀胱違和感にも効果を持つ.
  8. 中枢性鎮痛剤・鎮痛法とは事なり,創自体に作用し消炎作用を持つ.
  9. 持続静注が終わっても,直ぐに痛くなることは少ない.
  10. 深夜,看護師が疼痛対策にベッドサイドへ赴いたり,主治医に相談する必要が少ない.

一方デメリットは
1.アセトアミノフェンに比して高価である.
2.喘息や胃潰瘍・十二指腸潰瘍をお持ちの方には使用できない.
3.投与に点滴ラインが必要となる.
4.肝臓や腎臓への負担を考え,一晩のみの投与に制限される.

めっちゃ長くはなりましたが,これらが私が医療用麻薬を使わない理由と,アセリオ®よりロピオン®を好む理由となります.

以上,この度も最後までお読み頂き心より感謝いたします.ぜひご意見や感想を文字化しお送り下さい.私にとってはこの上ない喜びとなり,またブログを書く上での熱源となります.期待しお待ちしております.

※参照
日本ペインクリニック学会
Wikipedia
日本生化学会

追記;これは私の自負ですが,福島県いわき市で1番,癌ではない方の疼痛に医療用麻薬を処方している,と思っています.外来では,医療用麻薬はとても有効な武器です.患者さんが喜んで笑ってくれるのです.相当量の鎮痛剤が欠かせなくなった,現在の私も助けられています.

アイキャッチ写真は「いらすとや」より

洪 浩彰 (こう ひろあき)

會津若松市生まれ,弘前大学を経て1989年麻酔科医となる.1994年よりいわき市.現在常磐病院勤務.東日本大震災を機にSNSを始めボランティアを知り,随筆を書き始める.2023年よりブログに本腰.趣味はゴルフとお酒.主催する交流会は100回,動員数2,500名以上.いわき麻酔と痛みのクリニック元院長

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